【主人公】
「どうして、海が……」
【神代 海】
「どうしてって、そりゃあ、オマエがピンチだから、助けに来たんだよ。 オレは神子の守護者だからな!」
【主人公】
「神子の守護者……?」
【主人公】
(神子……。今日見た夢で聞いた言葉……)
【神代 海】
「そう、神子の守護者。まぁ、見てなって!」
【神代 海】
「蒼碧に宿りし、神よ血に魅入られし、邪神よ」
【神代 海】
「禁忌に触れし、歴史を越え、魂合ふ行方を願わくば、我と汝の名のもとに、今、ここに召喚す!」
【主人公】
「今のは……」
【神代 海】
「これが神子の守護者の力だよ」
【勅使河原 錬】
「黒紫を纏ひし、
天帝よ刹那に消え果つ、幻影よ」
【伊波 遊】
「銀塵に誘ひし、地金の誓いよ
天命が為出づ終焉よ」
【勅使河原 錬】
「禁忌に触れし、歴史を越え、魂合ふ行方を願わくば、
我と汝の名のもとに、今、ここに召喚す!」
【主人公】
(どうなってるの……?
勅使河原先輩も遊先輩も神子の守護者だってこと……?)
【伊波 遊】
「そんじゃ、いっちょやってやるか!」
【伊波 遊】
「よっと!」
【異形の者】「グォォォッ!」
【勅使河原 錬】
「お前はそんなところになんで座ってるんだ。
巻き込まれたいのか」
【主人公】
「うぅ……」
【舞川 臣】
「お前……よくも彼女を!!」
【クレイシス】
「その女がオマエをかばったまで……。
むしろそれぐらいの軽傷で済んで、良かったと思うんだな」
【舞川 臣】
「なんだと!?」
【クレイシス】
「……なんだ、オマエ、神子に惚れているのか?」
【舞川 臣】
「だったら、なんなんだよ!?」
【クレイシス】
「なに……オマエを殺すのではなく、
女から殺っても楽しそうだと思ってな」
【舞川 臣】
「っ……彼女に、手出しはさせない!」
【クレイシス】
「はっ! よく言う。
女が痛みに堪えてうずくまっているのは、誰の所為だ?」
【舞川 臣】
「それは……っ!」
【高梨 響】
「……こうして僕が先輩の手を引きますから、
先輩は僕の後ろを付いてきてください」
【主人公】
(響くんの手が、私の手を取って……)
【高梨 響】
「……こうしてると、あの日のことを
思い出します」
【主人公】
「え……?」
【高梨 響】
「僕の入学式の日、先輩は僕のことを体育館まで
案内してくれましたよね……?」
【高梨 響】
「……あの時、先輩は僕の手を
迷わず握ってくれましたよね」
【主人公】
「あっ……ごめんね。
知らない人にいきなり手なんか握られて
イヤだったよね?」
【高梨 響】
「嫌なんて思いませんでした……!
むしろ先輩には感謝しているんです」
【主人公】
「感謝……?」
【高梨 響】
「あの日、あそこで迷って、不安で……。
それにただでさえ入学初日で緊張していたので
僕はその手に、すごく安心したんです……」
【主人公】
「響くん……」
【高梨 響】
「だから、今日は僕が先輩を先導します」
【主人公】
「遊先輩……!?」
【伊波 遊】
「ハニー、オレの目を見て」
【主人公】
「……」
【主人公】
(どうしよう……。
先輩の綺麗な顔が、こんな近くに……)
【主人公】
(すごくドキドキする……。
でも、どうして
こんなことになったんだっけ……?)
【伊波 遊】
「やっぱり、ハニーの瞳はキレイだね」
【主人公】
「遊先輩……」
【伊波 遊】
「どう? ハニーのオレへの気持ち、
これで気付いたんじゃ……」
私の前にいくつもの大きな影が立ちふさがる。
飛び出してきたいくつもの大きな影は、よく見ると、青黒く光る甲冑を身に付け、
手には見たこともない程の大きな鋭い爪があった。
【主人公】
(誰か……、誰か……! どうしよう……。このままじゃ……)
【異形の者】
「フゥ……」
【主人公】
「きゃぁぁぁぁっ!?」
殺意――という明確な感情は、感じられなかったものの、
その動作から、私の命を狙っていることは明らかだった。
【主人公】
(爪が……このままじゃ殺される――)
【主人公】
「えっ!?」
【神代 海】
「ふぅー! ギリギリセーフ!」
【主人公】
「どうして、海が……」
【神代 海】
「どうしてって、そりゃあ、
オマエがピンチだから、助けに来たんだよ。
オレは神子の守護者だからな!」
【主人公】
「なっ………!?」
【勅使河原 錬】
「それにしても、初めて会った時とは、
随分印象が違うな」
【主人公】
「……そうですか?」
【勅使河原 錬】
「こんなに威勢の良い女だとは思わなかった。
初対面だから、あの時は猫でもかぶっていたのか?」
【主人公】
「別にそういうわけじゃありません……」
【勅使河原 錬】
「声が震えてるぞ?」
【主人公】
「それは……」
【勅使河原 錬】
「もしかして、この程度のことで照れているのか?」
【主人公】
「っ……離して下さい……!」
【勅使河原 錬】
「この状況でも、挑戦的な目をするんだな。お前は……」
【主人公】
「……」
【勅使河原 錬】
「ふっ、挑戦的な目をしている割に、顔が赤いぞ?」
【舞川 臣】
「1人で良いところを見せるなんて、ずるいよ。海」
【主人公】
「臣!?」
【舞川 臣】
「見ててね。僕も君にいいところを見せるから」
【舞川 臣】
「颯棘に呉れし、宿命よ由縁に忌みし、枢の番よ」
【舞川 臣】
「禁忌に触れし、歴史を越え、魂合ふ行方を願わくば、
我と汝の名のもとに、今、ここに召喚す!」
光が煌めくとともに、天にかざした臣の左手には、
見たこともない、槍とも斧とも言い難い、大きな武器が握られていた。
【主人公】
「えっ……!? もしかして、臣も……」
【舞川 臣】
「うん、ごめんね。ずっと黙ってて。
僕も海と同じ、神子の守護者なんだ。君を守る為のね」
【高梨 響】
「緋紅を統べし、呪交よ言霊に射込みし、種連よ」
【主人公】
(この声は……!)
【高梨 響】
「禁忌に触れし、歴史を越え、魂合ふ行方を願わくば、
我と汝の名のもとに、今、ここに召喚す!」
【主人公】「響くん……!」
響くんは左手を斜めに軽く上げ、顔の横で止めた姿勢で唱え終える。
すると、響くんの言葉に光が集まった後、響くんの左手には弓が出現していた。
【高梨 響】
「……ふっ」
【異形の者】
「グォォォォッ!」
【主人公】
「響くん、どうして……!」
【高梨 響】
「……僕も神子の守護者なんです」
【主人公】
「えっ……」
【高梨 響】
「神子が先輩だったなんて……」
【主人公】
「神子……? 私が?」
【高梨 響】
「先輩は自分が神子だって、知らなかったんですか?」
【勅使河原 錬】
「やっぱりな」
【伊波 遊】
「こんなことだろうと思ったよ」
【勅使河原 錬】
「お前の嫌な予感はよく当たるな」
【伊波 遊】
「それ、全然褒めてないよな?」
【勅使河原 錬】
「ああ、お前を褒めることはない」
【伊波 遊】
「たまには褒めてくれてもいいと思うけどねー。
オレって、褒められて伸びるコだから」
【主人公】
「勅使河原先輩、遊先輩……」
【勅使河原 錬】
「こんなに早くまた会うことになるとはな」
【伊波 遊】
「まさか、神子がキミだったとはね。
まっ、オレたちが来たから、もう安心しなよ」
【主人公】「えっ……?」
勅使河原先輩は胸の前で両手を斜めにクロスし、
遊先輩は右手を斜めに軽く上げ、顔の横で止めると、
はっきりとした口調で耳慣れない言葉を口にし始めた。
【勅使河原 錬】
「黒紫を纏ひし、天帝よ刹那に消え果つ、幻影よ」
【伊波 遊】
「銀塵に誘ひし、地金の誓いよ天命が為出づ終焉よ」
【勅使河原 錬】
「禁忌に触れし、歴史を越え、魂合ふ行方を願わくば、
我と汝の名のもとに、今、ここに召喚す!」
【伊波 遊】
「禁忌に触れし、歴史を越え、魂合ふ行方を願わくば、
我と汝の名のもとに、今、ここに召喚す!」
2人の言葉に共鳴するように、まばゆい光が閃くと、
勅使河原先輩の両手には銃が、遊先輩の手には鞭が握られていた。
【主人公】
(どうなってるの……?
勅使河原先輩も遊先輩も神子の守護者だってこと……?)
【伊波 遊】「そんじゃ、いっちょやってやるか!」
【勅使河原 錬】
「飲み物は全員に渡っているか?」
【舞川 臣】
「はい、大丈夫です」
【神代 海】
「おう! バッチリだ!」
【伊波 遊】
「それじゃ、乾杯のコールは誰がする?」
【神代 海】
「それはもちろん、今回の主役の響だろ?」
【高梨 響】
「えっ、僕ですか……!?」
【主人公】
「うん、私も響くんが良いと思う!」
【高梨 響】
「先輩まで……!」
【伊波 遊】
「ハニーの頼みだったら、響も断れないよなー?」
【高梨 響】
「遊先輩……!」
【勅使河原 錬】
「それじゃ、響。頼む」
【高梨 響】
「わかりました。えっと……まずは先制した事を祝し、
これから先の戦いに向けて……」
【神代 海】
「長いしわけわかんねぇ! みんなカンパーイ!」
【主人公】
「乾杯!」
【勅使河原 錬】
「乾杯!」
【舞川 臣】
「乾杯ー!」
【伊波 遊】
「カンパーイ!」
【高梨 響】
「えっ!? か、乾杯!」
【神代 海】
「……ぷはぁ~! やっぱり、一仕事終えた後の
ジュースは美味いな!」
【舞川 臣】
「海……なんだか、オヤジくさいよ」
【伊波 遊】
「あー! 錬!
そのお菓子は、オレが買った奴だよ!」
【勅使河原 錬】
「そうだったのか。なら名前でも書いておけ」
【伊波 遊】
「なんだよそれ!」
【高梨 響】
「……なんだか、こういう賑やかなのっていいですね」
【主人公】
「うん、すごく楽しい!」
【神代 海】
「あ、あのさ……」
【主人公】
「何?」
【神代 海】
「やっぱり一緒に寝ようっ!」
【主人公】
「えっ!?」
【神代 海】
「いや、その、別に変な意味じゃなくて!
ただ、一緒に寝たら、オマエの怖い気持ちも
薄れるかなって……」
【主人公】
「海……ありがとう。それじゃあ、
一緒に寝てもらってもいい?」
【神代 海】
「ああ、もちろん! よかったー……って、
別によかったっていうのは、オマエと寝られることが
よかったんじゃなくて、その……」
【主人公】
「ふふっ、わかってる。海、顔真っ赤だよ」
【神代 海】
「えっ!? ……ああーもう、いいから寝るぞ!」
【主人公】
「うん!」
【主人公】
「ごめん、背中当たっちゃうね。
やっぱり、2人で寝るにはちょっと狭いかも」
【神代 海】
「オ、オレは別に平気だ!」
【主人公】
「そう? だったらいいけど……」
【神代 海】
「オマエこそ……大丈夫なのか?」
【主人公】
「うん。私が普段使ってるベッドも
そんなに広くないし気にならないよ」
【神代 海】
「いや、そうじゃなくて……オレから
言い出して何言ってんだって感じだけど……
オレと一緒に寝るのイヤじゃないのかなってさ」
【舞川 臣】
「わかってよ……!
僕は君のことを大切に思っているから……。
だから、危険な目に遭わせたくないんだ……」
【主人公】
「私のことを守ってくれなくてもいい。
私はそれでも、臣のそばにいたいの」
【舞川 臣】
「……どうして……」
【主人公】
「今、臣のそばから離れたら、
もっと知らない臣になっちゃいそうで……。
怖いよ……」
【舞川 臣】
「どうしたの……?」
【主人公】
「私が不安な時、いつもこうしてくれてたでしょう?
こうして手を握ってくれた」
【舞川 臣】
「…………」
【主人公】
「臣が不安な時は、私がそばにいるよ。
だから、私の前で強がらないで……」
【主人公】
「泣いたっていいよ。
ずっと我慢してること、わかってるから……。
ねぇ、聞かせて? 臣の苦しみを、私に分けて……」
【舞川 臣】
「僕は…………」
【高梨 響】
「ここから逃げようだなんて思わないでくださいね。
仮に牢屋から出られたとしても、
見張りの異形の者が、先輩を見過ごすことはないので」
【主人公】
「響くん……一体どうしちゃったの?」
【高梨 響】
「……」
【主人公】
「響くん……!」
【主人公】
「待って、響くん……!」
【高梨 響】
「……離してください」
【主人公】
「……っ!!」
【主人公】
(とても響くんとは思えないほど、
冷たい目をしてる……すごく怖い。でも……!)
【主人公】
「……離さない。響くん、お願い!
私の質問にちゃんと答えて……!」
【高梨 響】
「……はは、なんです。
そんなに僕に構ってほしいんですか?」
【主人公】
「え……?」
【主人公】
「……きゃっ!?」
【高梨 響】
「離さないと言ったのは先輩ですよね……?
仕方がないので……先輩のこと、可愛がってあげますよ」
【神代 海】
「う……うあああああっ!!」
【主人公】
「海!?」
【神代 海】
「はぁはぁ……オレは、オマエに……。
オマエだけじゃない、臣にまで剣を……っ!」
【主人公】
「海、大丈夫だよ。ゆっくり私の顔を見て?」
【神代 海】
「……! オマエ……」
【主人公】
「うん、私はここにいるよ。だから、安心して」
【神代 海】
「でも、オレ……また、おかしくなって……
オマエに剣を向けて……」
【主人公】
「大丈夫。何もされてない。海は何もしなかった。
だから、安心して」
【神代 海】
「ああ……ほっぺた温かい。
なんでだろ……オマエの手、すげー安心する」
【主人公】
「落ち着いて! 大丈夫だよ!」
【勅使河原 錬】
「……もっと近くに来てくれないか」
【主人公】
「……?」
【主人公】
「このくらいですか?」
【勅使河原 錬】
「……もっと……」
【主人公】
「て、勅使河原先輩?」
【主人公】
(抱きしめられてる……!?)
【勅使河原 錬】
「……少し、このままでいさせてくれ」
【主人公】
(そんな声ずるい……なんだか胸が苦しくなる)
【主人公】
「はい……」
【勅使河原 錬】
「やっぱり不思議だ……。
お前がそばにいてくれるだけで、心が穏やかになる」
【勅使河原 錬】
「何も怖がることはない、
心配することもないって思える……」
【主人公】
(勅使河原先輩……。
先輩が安心できるなら私は先輩のそばにいたい)
【主人公】
「大丈夫ですよ、勅使河原先輩。
私は先輩のそばにいます――」
【勅使河原 錬】
「ああ、このまま、ずっとそばにいてくれ……」
【舞川 臣】
「君はどうしてそんなに……優しいんだろうね」
【主人公】
「そんなことないよ。臣の方が優しい」
【舞川 臣】
「僕が?」
【主人公】
「だって、私を守ってくれるって
言ってくれたでしょう?」
【舞川 臣】
「それは……今までもそうだったし、
神子と守護者の関係になったから
特別ってわけじゃないよ」
【舞川 臣】
「むしろ、今まで以上に、君を守りたいって思うよ」
【主人公】
「ありがとう、臣……。
私も臣のこと、一番近くで守るからね」
【舞川 臣】
「……っ」
【主人公】
「!?」
【主人公】
「急に抱きしめるなんて、どうしたの……?」
【舞川 臣】
「…………」
【主人公】
(臣の温もりも、鼓動も、全てがこんなに近い――)
【高梨 響】
「先輩……この部屋から早く皆さんと一緒に、
元の世界に戻ってください!」
【主人公】
「そんな……1人でルイードの元へ向かうの!?」
【高梨 響】
「はい……」
【主人公】
「そんな……ダメだよ!
お願い、1人で行くなんて言わないで!」
【高梨 響】
「先輩……」
【主人公】
「やだ……
響くんと離ればなれになるなんて……!
そんなの、やだよ……!!」
【高梨 響】
「……っ!」
【主人公】
「響くん……っ……!」
【高梨 響】
「折角、泣き止んでくれたのに
また泣かせてしまいましたね……」
【高梨 響】
「先輩のこと、悲しませてすみません……。
でも僕は、先輩のことを巻き込みたくないんです……」
【主人公】
「だけど、1人で行くなんて危険だよ……!
何かあったら……!!」
【高梨 響】
「大丈夫です……それに、僕は先輩さえ
無事でいてくれればそれで……」
【主人公】
「だったら、私も……」
【高梨 響】
「え……?」
【主人公】
「私も、響くんと一緒に戦う!!」
【伊波 遊】
「もう……涙目になってるじゃん。
そんなに心配してくれてたんだね、ごめんね」
【主人公】
「いえ……」
【伊波 遊】
「でも、本当に持久力がついたのかなー」
【主人公】
「戦ってみないとわからないですよね」
【伊波 遊】
「……いや、もっと手軽に試せる方法があるよ」
【主人公】
「え?
……わっ!?」
【主人公】
「遊先輩……!?」
【伊波 遊】
「この間は錬に邪魔されちゃったでしょー?
だから、続きしよっか?」
【主人公】
「えっ……」
【伊波 遊】
「ねぇ、ハニー。オレのことどう思ってる?」
【主人公】
「どうって……」
【伊波 遊】
「正直に答えて」
【主人公】
「えっ、あの……」
【主人公】
(耳元で囁くなんて反則だよ……!)
【伊波 遊】
「恥ずかしがらずに教えてよ。ね?」